豆知識

あなたが知りたい業界裏事情

(エレベーター業界の利益構造のからくり)

エレベーター会社の営業手法や利益構造は基本的に携帯電話会社と同じような発想で成り立っています。最近でこそ、新らしいスマートフォンなどの携帯端末が 0 円で販売されているのを見かけなくなりましたが、携帯電話会社大手は赤字で携帯端末を販売したとしても、確実に毎月入る基本使用料やアプリ使用料、オプションサービスを契約させる事により、1 ~ 2 年という長いスパンで見れば十分に利益が残る収益体制を構築しています。
そして多くの携帯電話・スマートフォン利用者は、毎月のコスト計算よりも、新規購入時に安価に入るという “錯覚” に陥って満足している人が大半です。
エレベーター会社、特に、メーカー系会社の営業手法や戦略も同じことが云えます。
マンション販売元(デベロッパー)は、当然のことながら会社の利益確保のため、建築に纏わる原価を極力下げる努力をします。また、建築の原価を下げるということは、マンション販売時の価格弾力性 ( 値引余力)にも後々繋がってきます。
マンションには必ずエレベーターは必要なので、少しでも安く仕入れるべく、マンション販売元(デベロッパー)は営業努力をします。エレベーター会社 ( 大手 5 社がほとんど)は、販売する時は赤字でもエレベーターを施工主であるゼネコンに納入し、マンション分譲後にマンション販売元(デベロッパー)から建物の権利を引き継いだ管理組合から、確実に毎月入るメンテナンス管理費で、利益がたくさん出るようにと考えるわけです。
その結果、大多数のマンション管理組合は、メーカー系子会社である保守メンテナンス会社との間で、新設後数年は全く必要のない「フルメンテナンス契約」を結ばされています。
当然のことなのですが、築年数が浅い新しいマンションでは、地震災害等、よほどのことが無い限り、エレベーターの重要保安機械が破損することは皆無なので、「POG 契約」の方がメリットがあるといえます。
「フルメンテナンス契約」では、「POG 契約」時は別料金設定である経年劣化によるワイヤーロープやケーブルの交換なども、毎月のメンテナンス管理費に含まれています。ただ、マンション管理組合としては費用が “割高” な分、修理費の予算計上をしなくても良いという点はありますが、一般論としては、築年数が浅い建物ではフルメンテナンス契約は必要無いということがいえます。(築年数が十年以上の建物やエレベーター使用頻度の多い商用ビルに関してはこの限りではありません。)
なので、マンション管理組合としては時間をかけてでも、居住者全員が安心してエレベーターを使用できるように、契約の変更には十分な広報活動と議論の場を設けることがとても重要となります。
競争原理が働かない業界

ここ数年においては、だいぶ緩和されてきたといいますが、まだまだこのエレベーター業界は競争原理があまり機能していない閉鎖的な業界です。その大きな原因となっているのは、

日本の大手 5 大メーカーによる寡占化の問題があります。

  • ・三菱電機
  • ・日立製作所
  • ・東芝(東芝エレベータ)
  • ・日本オーチスエレベータ
  • ・フジテック

どういうことかというと、日本のエレベーター業界は上記 5 社で市場全体のほぼ 4 分の 3 以上を独占しているということです。また、保守メンテナンス事業もこれらメーカー直系の子会社が大半を占めているのが現状です。

これは何を意味するのかというと、価格競争原理が働かず、適正な価格競争が起きにくくなりっており、エレベーターを設置しているメーカー系会社の独壇場といったことに繋がっています。

管理組合が錯覚に陥りやすいのは、「安全第一」と「純正メーカー」であることを武器に営業してくるメーカー系会社に、割高な保守管理料やリニューアル工事代金を請求され支払い続けているということです。その金額は、25年経つと新品のエレベーター 1 機買えるだけの金額になります。

「毎日使うエレベーターなので、何があっても安全第一!」

「安いメンテナンス業者に代えて,事故が起きたら誰が責任を取るのか?」

「死亡事故も発生しているので高い費用を払ってでも安全が一番だ!」

という考え方が優先してなかなか “値下げ交渉” や “メンテナンス会社変更” などに踏み込めないでいる現状も管理組合が錯覚に陥る原因の一つになっています。

そういったこともありますが、最近では価格の割安な独立系会社にメンテナンスをお願いする管理組合も少しずつ増えてきています。

従来から懸念されていた部品供給問題や技術レベルもメーカー系メンテナンス会社と同等になってきており、元々メーカー系エレベーター会社の下請け業者だったり、メーカー系会社を退職した技術者が在籍している会社が多いので、保守点検やリニューアル工事においても、同等のサービスを受けられるようになってきています。